一條次郎さんの『レプリカたちの夜』を読みました。
私はもともと不思議な世界観の話が好きなので、この本もおもしろそうだと思って手に取りました。でも、レプリカたちの夜は想像以上にわけのわからない話でした。
現実が壊れたような世界
レプリカたちの夜はどんな話なのか説明するのも難しいくらいへんてこな話でした。
舞台は動物のレプリカ工場。工場の従業員、往本(おうもと)はレプリカの品質管理部で働いています。彼はある夜、工場でシロクマを目撃し、そのことがきっかけで工場長からシロクマはスパイであるから調べて暗殺しろと命令されます。
往本がシロクマを目撃してからは次々とへんてこなことが起こり、だれの言っていることが本当かもわからなくなっていきます。
往本の記憶も飛んでいたり、往本の記憶と他の人の記憶が違っていたり…。
何が本当なのか、真実とは何なのか、分からなくなります。
往本はドッペルゲンガーの存在や、同僚である粒山の妻を名乗る女の奇行など、意味の分からない出来事を経て、往本はまた普通の朝を迎えます。
そうして次の日工場へ行くと何も起きていないかのようにも思えます。
往本だけがおかしくなっているようにも思えますが、その異常さは徐々に工場全体に及んでいきます。
そして度重なる異常事態の末に、往本は正常に見える世界へと帰ってきます。
でも、そこも正常に見えるだけの世界。
また何かきっかけがあれば、すぐにくずれてしまいそうだなと感じました。
おすすめ 不思議な世界観の話
最近読んだ本で、レプリカたちの夜と同じように不思議な世界観の話があったので紹介します。
紹介するのは
- 森見登美彦さんの『熱帯』
です。
熱帯は、これまたあらすじの説明しにくい本ですが、一言でいうと「謎の本の謎を追う本」です。
作中の中には本書の題名と同じ『熱帯』という本が登場します。
熱帯は不思議な本で、何人もの人がその存在を確認してはいるものの、だれも最後まで読み切ったことがないという本です。
熱帯は読み切る前に消えてしまうのです。
その本の正体を追って、登場人物が不思議な世界へと迷い込んでいきます。
作中にはアラビアンナイトのエピソードが何度か登場し、この本の構成もアラビアンナイトのような入れ子構造になっています。
そのせいで、どんどん深く謎の中に入り込んでいってしまうような感覚になります。
とても不思議な本なのですが、『レプリカたちの夜』に比べると、優しい雰囲気の本だと思います。
気になる方はぜひ読んでみてください。
Information
『レプリカたちの夜』一條次郎 新潮文庫 2018
『熱帯』森見登美彦 文藝春秋 2018